女性ゴルファーに多いTFCC障害とは?
カイロプラクティックの視点から見る予防とケア
1. はじめに
近年、ゴルフを楽しむ女性が増えており、アマチュアからプロフェッショナルまで多くの女性が日々スイングを重ねています。しかし、その一方で手首に痛みを訴える方も少なくありません。特に小指側の手首に痛みを感じる場合、それは**TFCC障害(三角線維軟骨複合体損傷)**かもしれません。
本記事では、TFCC障害について、カイロプラクティックの専門的な視点からその原因・予防・対処法について詳しく解説していきます。
2. TFCC障害とは?
TFCC(Triangular Fibrocartilage Complex)は、手首の小指側にある軟骨や靱帯などの複合体で、手首の安定性と回旋運動を支える重要な組織です。特に手首をひねる動作や体重がかかる姿勢で大きな負荷がかかります。
女性に多い理由としては、
- 筋力が比較的弱いこと
- 関節が柔らかく可動域が広いこと
- ホルモンの影響による結合組織の緩み
などがあり、手首にかかるストレスが蓄積しやすいのです。
3. 症状と評価
TFCC障害の代表的な症状は以下の通りです:
- 手首の小指側に鋭い痛み
- 回外・回内(ドアノブを回すような動き)での不快感
- 握力の低下や手首の安定性の欠如
- 関節のクリック音や引っかかり感
カイロプラクティックでは、手関節の可動域テストや圧痛部位の触診により、TFCC障害の可能性を評価します。症状に応じて、整形外科的検査との併用を勧める場合もあります。
4. カイロプラクティック的アプローチ
TFCC障害に対して、カイロプラクティックでは以下のようなアプローチを取ります:
- 手関節および前腕のアジャストメント
骨格のずれを整え、正しい動きと圧力分散を促します。特にKIZUカイロプラクティックでは、*手根橈骨関節と手根中央関節の可動性に着目しています。 - 前腕屈筋・伸筋のリリース
筋肉の緊張を緩め、局所の負荷を減らします。 - 肩関節や胸郭の調整
スイング動作の全体的なバランスを整えることで、手首への負担軽減を図ります。 - 神経機能の正常化
正しい神経伝達が行われることで、筋肉の反応や回復力が高まります。
*イラスト:橈骨中央関節と手根中央関節について
5. 自宅でできる予防とセルフケア
セルフケアとして以下の方法が有効です:
- 手首のストレッチ
無理のない範囲で、小指側を中心とした伸展・屈曲ストレッチを行う。 - グリップの見直し
強く握りすぎないよう意識し、手首に余計な緊張を与えないグリップにする。下記にあるグリップの違いに着目しています。 - ゴルフ後のアイシング
プレー後に手首が熱を持っている場合は、15分程度のアイシングで炎症を抑える。 - フォームの再確認
指導者や動画を活用し、手首に負担のかからないスイングフォームを心がける。ーーー私見:良いグリップとTFCC障害を起こしやすいグリップの違いについてーーー
*TFCC障害になりやすいグリップ
*TFCC障害を予防できるグリップ
6. まとめ
TFCC障害は、早期の発見と対処が非常に重要です。放っておくと慢性化し、プレーに支障をきたすばかりか、日常生活にも影響が出てしまいます。カイロプラクティックでは、手首だけでなく、身体全体のバランスからアプローチすることで、根本的な原因にアプローチします。女性ゴルファーが安心して長くゴルフを楽しめるよう、体の声に耳を傾け、早めのケアを心がけましょう。
ーーーTFCCについてーーー
*三角線維軟骨複合体(TFCC)とは、手首の小指側にある、橈骨と尺骨の間を結ぶ靭帯や腱、軟骨などの軟部組織によるネットワーク構造です。この組織は、手関節に隣接する遠位橈尺関節を安定化させ、前腕の回内外運動を可能にします。
手首の動きの中で、橈屈動作は橈屈と背屈の複合運動であり、また、尺屈動作は尺屈と手掌側への屈曲の複合運動であります。この時の手根骨の連動する動きが手首の痛みの原因になっている可能性が高いのです。また手首痛の改善には、上記手根中央関節と手根橈骨関節への両方へのアプローチが重要になります。(手根中央関節は伸展時の約35%、手根橈骨関節は約65%担う。)橈屈では、手根骨は伸展の動きとともに手掌側に出る力のベクトルが働きます(月状骨を除く)また、尺屈では、手根骨は屈曲の動きとともに手の甲側に出る力のベクトルが働きます。結果、尺側に位置している状態が長いと、手根骨は伸展動作への準備ができず関節が拘縮してしまう可能性があるのです。
文責:木津直昭