重力とドーパミンの関係について

2023年10月 NHK番組『ヒューマニエンス40億年のたくらみ』を拝見して

 最近では、私がスポーツ観戦以外で唯一見ている番組であります。毎回、興味あるテーマを取り上げてくれている番組でもある『NHKヒューマニエンス』。今回は、『宇宙体験』について特集されていましたので興味深く見させて頂きました。
 やはり宇宙をテーマにした番組は見たくなりますね、、MCの織田裕二氏も言われていましたが、僕も同じで幼少の頃、なりたい職業は宇宙飛行士でした。昭和の男の子は、宇宙とかUFOとかに興味津々なのです。 そんな番組の中で、一番興味を持ったのが『重力』についてです。東北大学大学院の東谷篤志教授が、長年行ってきた線虫を使った無重力環境でのドーパミン内生量の変化について検証した研究です。
———————————————————————————
以下、令和4年2月1日に東北大学大学院生命研究科の東谷教授が発表したプレスリリースからの引用です。

宇宙の無重力環境ならびに地上での疑似微小重力環境で生育した個体で は、神経伝達物質の 1 つであるドーパミン量が低下して運動能力の減弱につながるこ とを明らかにしました。また、ドーパミン内生量の低下は、物理的な接触刺激の付与だ けでも抑えられ、運動能力の減弱が改善しました。これらの結果より、人類がより長期 間宇宙に滞在するには、運動に加えて接触刺激の介入も健康を維持する上で大切な 要素であることが強く示唆されました。
———————————————————————————
 人間は無重力下では、運動能力が減弱化し、筋力や内臓機能など宇宙飛行士が地球に帰還した時の映像などからも明らかですし、予想できる結果だと思います。当然、無重力環境で生育した線虫も、運動能力が次第に減退することは想定できますが、
 この研究での特筆すべき点は、この時のドーパミン内生量について研究しているところだと思います。ドーパミンは、『気力』や『やる気』に直結する神経伝達物質です。日本人の20万人は罹患していると言われているパーキンソン病は、正しくこのドーパミンが減少することによって発症すると言われています。
 そして、ドーパミン内生量を増加させるために無重力環境の線虫に対して、細かなビーズを入れて、線虫がこのビーズに接触する検証されています。その研究結果から、無重力環境でもこのビーズに接触した線虫は、運動能力が増加し、映像でも確認できましたが、緩慢だった動きが元気に動き回っているのです。この時のドーパミン内生量は、重力下と同様の内生量になったのです。
 この結果は、何を意味するのか?自分自身でも妄想・推測してみました。人間も当然ドーパミンが減少しているわけです。宇宙飛行士の野口聡一氏も宇宙ステーションでは、運動能力の低下とともに精神的な変化は感じるとおっしゃっていました。それがやる気や気力と同様のもののようです。

接触する重要性

地球上では人類は、地面に接触します。先ずこれは、現在の厚底シューズが、単なる固有受容感覚だけではなく、このドーパミン内生量の減少にも影響している可能性があることに繋がる。
また、このコロナ禍で、人々は、人との接触を避けるようになってしまったわけで、オンラインで済ませられることは、人と接触しない、触れないわけです。この状況は、ドーパミン量を減少させて、うつ病や自殺などが増えていることにも直結するのでは?と。
 また高齢者の安静が増えれば、当然ドーパミンが減少するわけで、この影響が前述したパーキンソン病や認知症患者を増やすことにも繋がるのだと。

接触を増やす必要性

 これらのことから、重力を味方につける方法が、筋骨格系だけではなく、この神経伝達物質であるドーパミンにも影響するということは、私にとっては、とてつもなく大きなトピックであります。
 このトピックから自分のすべきことが明確化されました。それは、重力を味方につける施術に上記した『接触する重要性』(ドーパミンの影響)を含めていくこと。
それは、今広げようとしている抗重力セラピーにも取り入れ、多くの人に伝えること。
 そして、高齢者には、出来るだけ手と手を触れ合って元気つけていきたいと思う!

文責:木津直昭

参考文献:

題目:Histone deacetylase HDA-4-mediated epigenetic regulation in space-flown C. elegans
著者:Atsushi Higashitani, Toko Hashizume, Mai Takiura, Nahoko Higashitani, Mika Teranishi, Rika Oshima, Sachiko Yano, Kana Kuriyama, Akira Higashibata
筆頭著者情報:東谷篤志、東北大学大学院生命科学研究科
雑誌:npj Microgravity
DOI : 10.1038/s41526-021-00163-7

題目:Loss of physical contact in space alters the dopamine system in C. elegans 著者:Surabhi Sudevan, Kasumi Muto, Nahoko Higashitani, Toko Hashizume, Akira Higashibata, Rebecca A. Ellwood, Colleen S. Deane, Mizanur Rahman, Siva A. Vanapalli, Timothy Etheridge, Nathaniel J. Szewczyk, Atsushi Higashitani 筆頭著者情報:Surabhi Sudevan、武藤 夏澄(東北大学大学院生命科学研究科) 雑誌:iScience Volume Page:Vol.25 (2), 103762 DOI:10.1016/j.isci.2022.103762