先天性股関節脱臼へならないようにする育児習慣とは?

お子さんの歩き方が気になる方は必見です!

 股関節は、骨盤側の凹み(寛骨臼)に大腿骨側の半球形部分(大腿骨頭)がはまり込む形をしています。この股関節が先天的に適合していない状態を一般的には先天性股関節脱臼と呼ばれていましたが、多くの場合、赤ちゃんが生まれた瞬間に完全に脱臼していることは少なく、生まれた時には不安定である関節が、徐々に脱臼へと移行することが多く、最近は特に欧米では「先天性」という言葉を用いず、Developmental Dysplasia of the Hip(発育性股関節形成不全)という呼び方をしています。

この徐々に脱臼へと移行させてしまう原因があります。それは親側のちょっとした育児習慣の蓄積によって股関節の脱臼を誘発してしまう可能性もあるので、以下の三つのポイントに注意しましょう!

■育て方の気をつけて欲しいポイント3つ

1、おむつ
おむつは両脚がM字に曲がり、自由に脚を動かせる状態の股おむつにしましょう。サイズの合わない小さいものでは締め付けるようになるため、脚が自由に動かしにくくなってしまいます。「おくるみ」のように両脚が伸びた状態で固定しないようにしてください。また、おむつの交換時に赤ちゃんの両足をお母さんの片手で持って引き上げるようにしないで、お母さんの手のひらを赤ちゃんのお尻の下に入れて持ち上げて交換してください。

2、抱っこ
抱っこは「コアラ抱っこ」をしましょう。赤ちゃんを正面から抱くと、両膝と股関節が曲がったM字型開脚になります。コアラが木につかまっているように、いつも赤ちゃんの両脚の間にお母さんの手を入れるように習慣づけて下さい。抱っこひもでは、「正面抱き用の抱っこひも」はM字型開脚になるので、使用は問題ありません。「ベビースリング」を横抱きに使用することは、開脚の姿勢がとれず両足を伸ばした状態になるので止めましょう。

3、向き癖
寝ているときに向き癖がある場合、反対側の脚が立て膝になり、内側に倒れた姿勢になって脱臼してくることがあります。向き癖側の頭、体をタオルやマットで持ち上げて、反対の脚が外側に倒れて開くように工夫してください。

*育児のちょっとした習慣を変えるだけでお子さんの成長過程においてのマイナス要因を減らすことができます。
今回の股関節脱臼まで至らなく、例えば亜脱臼だとしても、その影響は大人になって膝や股関節疾患の要因になる可能性もあります。成長過程においての大切な育児習慣を身につけておきましょう!

*お子さんの姿勢や歩き方が気になる方は、内股歩行研究センターのセルフチェックをご覧くださいませ。→内股歩行研究センター公式サイト

*レントゲン像は、私木津直昭の股関節AP像(2021年6月)

出典:
■東京大学医学部附属病院 整形外科学教室
■平成28年度 日本医療研究開発機構研究費 成育疾患克服等総合研究事業
乳幼児の疾患疫学を踏まえたスクリーニング等の効果的実施に関する研究

文責:木津直昭