カラダの使い方による障害④『頚椎の回旋障害』

以下の症例ケースから、カラダの使い方による障害④『頚椎の回旋障害』についての自分なりの考えを述べてみます。

症例ケース:慢性的な首の不調(55才男性)

半年前から首の不調が発生し、徐々にその状態が悪化し来院する。何もきっかけもなく、日常の中で知らず知らず症状が悪化しているとのこと。頚椎可動域は、左回旋が45度で痛みが発生するため、その前段階までしか動かさなくなっている。右回旋は正常。左側屈・後屈でも可動域減少。腕のしびれなどの症状は無し。

検査中に見られた特徴的な動きとして、首を左回旋する時に、痛みがあるので、頚椎と肩で左に回旋させようとしているようである。このような痛みを回避するような動き(カラダの使い方)は、急性の寝違えのような症状ではしばしば見られる。また、今回の頚椎の慢性的な可動域減少も近年では珍しくない状態でもある。

この症状は、誰でも日常何度も起きる『顔を左に向ける(左回旋)』というカラダの使い方が、間違ったメカニズムで行っていることが溜まり溜まって、頚椎の正常な機能低下が起き、痛みに繋がっているのです。結果、椎間板ヘルニアや変形性頚椎症などの重篤なケースに発展する可能性もあるのです。

この『左を向くという日常動作』においての間違ったメカニズムとは?

これは、頚椎のモーションパルペーションという検査で発見できることができます。

先ず、頚椎回旋の正常な動きを解剖学的に見てみると

左右にそれぞれ、80~90度、合計で180度近く回旋できます。眼球水平運動(150~160度)を含めれば、360度近くの視野があることになります。

▪️環椎後頭関節(後頭骨と環椎の関節)ほぼ無し

▪️環軸関節(環椎と軸椎の関節)40~45度(合計85~90度)

▪️C2~C7(上位ほど大きい)45度 (合計90度)

上イラストを見てください。

頚椎の回旋運動を示しています。このイラストは、右に向いた時です。この時にこの頚椎の滑り運動が右優位で動いているとすると、この後に左に回すとすると、赤字で書いた矢印のような左への同じような頚椎の動きが必要になります。正常な関節が構成されていると問題ないのですが、頚椎に不正列が存在するとすぐに反対周りに対応できません。この動きは、この頚椎に付着する筋肉が反対周りにシフトしないとできない運動だからです。右向く動きの場合、神経は、右側の筋群には収縮しろと伝達し、左の筋群には、伸びて対応しろ!と瞬時にインパルスを送っています。しかし反対の左に向くには、この神経作用が反対になりますので、もし関節に不正列が残っていたとしたら、その動きに瞬時に対応できないのです。(もしくは、関節の動きがかみ合わない脱線が生じるのです)

これが、この患者の左に向けないなどの障害に繋がるし、この状態が長期化すれば重篤な障害の原因になる可能性が高いのです。

今回のケースでは、この左頚椎2番に左の動揺性があり体軸が崩れた状態になっていたのです。左向く時(左回旋)に頚椎2番に正常な滑り運動(軸運動)を起こさせるための矯正を行いました。

結果、左回旋時に左側の筋肉が収縮しろ!右側は伸びて対応しろ!というインパルスが正常に働き、痛みもなく、正しい頚椎の体軸で回旋できるので、症状は改善したのです。

*今回は、説明を省きますが、頚椎1番(環椎)に左への側屈動揺があったことも記しておきます。

*この頚椎への検査や分析、そして施術までの特殊なアプローチはカイロプラクターの得意とするところなのです。

考察:この頚椎の回旋運動ですが、頚椎の生理的なカーブが前提での可動域になります。近年増加している『ストレートネック』ではこの生理的な前へのカーブが消失した状態になりますので、この正常な回旋運動自体行えないことになります。結果、違う体軸で回旋していることが考えられますので様々な障害の原因になるのが当然と言えるかもしれません。

院長 木津直昭

参考図書:筋骨格系のキネシオロジー Donald A.Neumann (医歯薬出版株式会社)