No.202 ピアノによる肩甲骨、背中の痛み 17歳 男性 音楽大学付属高校生
症状
1~2カ月前からピアノを演奏すると1時間ほどで左肩甲骨の裏が痛む。痛みは鈍い感じであり、ピアノを演奏している時だけに生じ、日常的には痛まない。音楽大学附属高校の学生であるため1日9時間の練習を毎日続けているがが、最近はこの痛みのため3時間程しか練習が出来ない。
分析
初診時、姿勢は猫背が強く脊柱の可動性は低下していた。肩の動きを評価すると肩甲胸郭関節の機能障害が確認された。肩甲骨周囲の菱形筋や上部僧帽筋、肩甲挙筋は短縮と筋膜の癒着が見られ、下部僧帽筋と広背筋には筋力低下が生じている。 演奏フォームをチェックすると肩全体に力が入る。特に左肩が挙上し、肩甲骨が脊柱に近づく傾向が見られた。ピアノの先生からは演奏時に肩を脱力し肩を下げるように指示されているが、上手に行えないとの事。
施術
治療では胸椎と肩甲骨の可動制限を取り除き、周囲筋群の癒着を改善させるためグラストンテクニックを使用した。何も負担をかけない通常の姿勢では改善が見られたが、ピアノを演奏する体勢を取らせると左肩の挙上が確認されたため、 今まで使えなくなっていた下部僧帽筋のリハビリを行った。5回の治療で痛みの軽快が見られたが、長時間の練習ではまだ痛むとの事。10回の治療で更に改善が見られ、先生から指示されている肩の脱力も徐々に出来てきているとの事。 今現在、3ヶ月経過するが痛みはほとんど出なくなり、本番前の追い込み練習をしても疲れるぐらいで痛みは出ていない。
今回のケースは肩甲骨周囲筋群、特に肩甲骨を挙上させる筋群の筋膜の癒着、それに相反する下部僧帽筋の機能低下により肩甲胸郭関節の機能障害が生じていたと考えられます。肩甲胸郭関節は他の関節と比べると靭帯や関節包の接合は無く、筋肉のみで支えられています。そのため、この関節の機能障害は筋の過度な緊張によって引き起こされるケースが多く、特に癒着による障害では肩を脱力しようとしても正しい安定性は得られなくなります。ピアノに限らず楽器の演奏は体を固定させるため、この部位に機能異常が発生しやすいです。楽器を演奏される方で肩甲骨の裏が痛む方は同様の障害が発生していることが多いので、お早めにご相談ください。