No.189 ピアノ演奏後の手(親指)の痛み 腱鞘炎 40歳 ピアノ講師
症状
3ヶ月前から、ピアノ演奏後の右手首(親指付け根)の痛みを訴え来院。演奏後に手首がズキズキと痛み、最近ではピアノで大きな音を出そうと強く弾くと手首から肘にかけて痛みが走るようになってきた。病院へ行きレントゲンを撮影したが特に骨に異常は無く、腱鞘炎と診断を受けた。特に明確な治療は無く、湿布を張りしばらくピアノは控えるように言われている。
分析
初診時、触診の検査では母指伸筋腱や橈側手根伸筋腱など手首の背外側部に圧痛が集中しており、フィンケルスタインテストは陽性であった。 特に強い炎症反応は無かったが、長短母指伸筋や手関節伸筋群の癒着は強く肘関節外側上顆に圧痛の強いしこりが存在する。 ROMでは手関節伸筋群を伸長させると痛みが再現され、肘関節の腕橈関節には長軸方向の制限が確認された。
施術
治療では肘関節の長軸制限を改善させると同時に、母指伸筋群や手関節伸筋群にグラストンテクニックを加え癒着を改善させる。職業柄ピアノ演奏は中止できないため、腱鞘部の負担を軽減させるためテーピングを施した。 5回の治療で痛みは7割ほどに軽減し、ピアノ演奏に大きな差支えは出ていない。
今回のケースでは肘関節の機能障害により、手関節伸筋群や母指伸筋群に癒着が生じ、腱鞘炎を引き起こしたと考えられます。ピアノを演奏する時、手関節は回内位と軽度尺屈位で保持されます。この位置は通常でも手関節伸筋群が伸長されますが、 肘に異常のある状態では腱鞘部、伸筋群の負荷はさらに増大し、肘の外側には筋肉の癒着によるしこりが生じやすくなります。この状態はデスクワーカーに多いマウス症候群と同じような状態とも言えます。
この様な場合は手の治療だけでは無く、肘からの連動を含めた治療を行う必要があります。 ピアノ奏者に限らずなかなか改善が見られない腱鞘炎をお持ちの方は、このケースと同様の機能障害が生じている可能性がありますので一度ご相談ください。