No.187 テニス未経験のテニス肘 33才 女性 ペットトリマー 港区勤務
症状
1週間前から始まる右肘の痛み。右手で重いものを持ったり、肘の外側の骨を押すと痛い。仕事でハサミを使っていると痛みが増してくる。特にきっかけがあったわけでもなく、原因も思いつかない。1週間前より悪化してきている。
分析
痛みの部位を調べてみると肘の外側にある外側上果という骨の突起部分でした。この突起には手首を動かすための筋肉が付着しています。そして、この部分が痛いというのは、付着部から筋肉が何らかの理由によって引き剥がされていることが疑われます。手首を手の甲側に反らすとこの付着部に牽引力が加わるため痛みが誘発されました。また、この筋肉は中指にまで伸びているので、パーにした手を中指だけ爪側から押して抵抗を加えると肘に痛みが誘発されます。
この筋肉は短橈側手根伸筋といい、この筋肉による肘の痛みを一般的にはテニス肘(診断名:外側上顆炎)といいます。 この患者さんはテニスをして発症した訳でもなく、ましてやテニスをしたこともありませんでした。あくまでもテニスをする人に好発する症状なのでテニス肘という名前がつけられているのです。他にも同様のものとして、ゴルフ肘や野球肘、ランナー膝やメイド膝というのもあります。いずれもよく見られるからという理由でつけられています。
この患者さんはトリマーという仕事柄指先を酷使します。ハサミを使うときには手首全体をやや反らし気味にして腕を固定し作業しているのです。つまり、先ほどの筋肉は常に緊張を強いられているような状況であったため、慢性的なダメージが付着部に蓄積していったのだと思われます。指先をよく動かし細かい作業をするためには、しっかりと安定した手首や肘が必要なのです。その土台作りのためにがんばっていたのが肘周囲の筋肉だったのです。
施術
今回の症状は仕事が原因です。しかしながら、当然休むわけにもいきませんので上手に付き合っていく必要がありました。利き手は右でしたが、ハサミを持つ以外は出来るだけ左手を使ってもらうようにしました。もちろん、危険が伴うようなことは利き手で行いますが、重いカバンを持つなどは原則左手を使用してもらいました。
治療は、まず肘の筋肉の短縮がより付着部を引っ張るため筋緊張を取りました。これだけですとの再発は必至ですので、機能的な面を確認しました。作業姿勢をチェックし手首だけでなく肘や肩にまで動きの滞りが無いかを調べると、手首の捻りの動きや肩を真横に挙げる動きなどに制限がありました。炎症は負担さえかからなければ時間とともに改善しますが、これら軸の動きに制限やブレがあると症状は繰り返し現れてしまうのです。