No.129 パソコンによる手首の痛み(マウス腱鞘炎) 30歳 男性

症状

両手首の痛みと握力の低下を訴え来院。2年前から、手を付いて体重をかけると手首に痛みを感じるようになり徐々に悪化。整形外科を受診したところ両手首の腱鞘炎と診断される。湿布やアイシング、マッサージなどにより一時的に改善するが、しばらくすると悪化する。ここ半年くらいは仕事中にパソコンのキーボードを打ち続けると手首の痛みや握力の低下を感じる。症状が悪化するとコップを持つだけでも痛みを感じ、マウスを使い続けると特に右手には顕著な症状が現れる。

分析

初回検査時、握力などには筋力低下は見当たらなかったが、強く握る動作では手首に痛みがあった。可動域検査では両手首ともに背屈(手首を甲側に伸ばす)に制限と痛みがあった。また、手首や指の屈筋群には顕著な緊張が見られた。

施術

初回の治療時には、前腕部の緊張した筋の緩和と、手首の可動域を上げるようにアプローチ。加えて手首を保護する為にテーピングをし、日常的にできるストレッチをアドバイスした。5回の治療で痛みは半減し、握力の低下やコップを持つ時の痛みは感じなくなった。8回目の治療後には手を付いて体重をかけた時の痛みも消失し、仕事中や日常生活での痛みは無くなった。現在は、リハビリと手首の安定化を図るため治療を継続中。
今回の症状は典型的なマウス腱鞘炎とパソコン(キーボードのタイピング)によるトラブルです。反復した動きや長時間にわたって狭い可動範囲で指を動かし続けた結果、筋肉の硬縮や慢性的な緊張が引き起こされてしまいます。これらは適度なストレッチなどが有効ですが、長期的にみると『手首や指が自由に動ける環境』を整え、局所的に過剰な負荷が掛からないようにすることが重要です。つまり、手首の角度や肘の角度などが適切な位置にあること、それらを支える体幹の位置も適切であることも見直す必要があります。猫背になれば肩は下がり、肘はより曲がり、手首の角度もきつくなります。小さな事ですが、長い労働時間においては大きな差となります。パソコン(キーボードのタイピング)やマウスによって慢性的な腱鞘炎、手首の痛み、腕のだるさを感じている方は、一度全体を見直してみることをお勧めします。