No.164 ピアノ教師の腕のしびれ~頸椎ヘルニア 60歳 女性 音楽大学教授 ピアノ講師

症状

慢性的に続く左腕のしびれを訴えて来院。半年前からしびれが悪化しており、病院でのMRI検査では第5頸椎と第6頸椎間の椎間板ヘルニアが確認されている。 ピアノを教えるレッスン後に特にしびれを強く感じ、最近は長時間のレッスンができなくなっている。ピアノを教える時は以前から首を右に回しにくいこともあり、生徒さんの右側に位置し、左を向きながら教えている。

分析

初回検査時、姿勢はでは左肩が下がり首は右に傾いており、椎間板ヘルニアによる神経圧迫からの逃避姿勢が確認された。また胸椎の後彎は強く、それに伴うストレートネックが存在する。神経学的検査では第6頸椎神経根の知覚,筋力,反射の低下が確認され、椎間板ヘルニア由来の問題と考えられる。上部頚椎の可動触診では第1頚椎の左側方への可動性低下が確認され、後頭下筋群には強い癒着が見られた。

施術

治療では、第5頸椎と第6頸椎間の椎間板にかかる負荷を軽減させるようにアプローチ。第1頚椎の可動性を改善させ、中部頸椎には前弯を作るようにモビリゼーションを行った。さらに、癒着している後頭下筋群にはグラストンテクニックも行う。自宅ではストレートネックを改善させる枕を使用してもらい、並行して頭部の重心を改善させるエクササイズを指示する。5回目の治療後から徐々にしびれが軽減されてきている。引き続き経過を診ながら治療を行っている。
今回の左腕のしびれは椎間板ヘルニアによるものと判断できますが、その原因は以前からあった上部頚椎の可動制限と後頭下筋群の癒着によるものと思われます。第1頸椎の左側方への可動制限が頭部の重心を左側に移動させ、その結果、頚椎の左側の椎間板や神経根は常に圧迫をされている状態でした。これがヘルニアを誘発させたと考えられます。また右側への重心移動が正常に行えないため右を向きにくく、そのため自然と左を向くことが多くなったことが悪循環になってしまったと考えられます。今回のようにヘルニアになるまでには原因があります。たとえ痛みはなくても同じ動きや体勢を繰り返す方は筋の癒着が進みやすく、これが原因となり歪みをしつこいものにさせるケースが多く見受けられます。少しの体の不具合でも、なるべく早めにご相談ください。