No.159 コントラバス奏者の腰痛 47歳 男性 コントラバス奏者

症状

1週間前から始まる右腰から臀部の痛みを訴えて来院。 以前から右の腰は痛みやすかったが、今回はコントラバスの演奏を終えて立ち上がった瞬間に強い痛みが走ったとの事。職業はコントラバス奏者でオーケストラに所属しており、個人での演奏活動もしている。

分析

初診時、右腰部の椎間関節に強い運動機能障害と痛みが見られた。それに伴い、右背部から腰部にかけての脊柱起立筋群には癒着が見られ、右中臀筋には圧痛がある。 また、コントラバスを演奏する姿勢に起因すると思われる肩甲帯のゆがみが見られ、肩甲骨に付着している筋肉である上部僧帽筋の過緊張と下部僧帽筋の筋力低下が確認された。コントラバス演奏時のスタイルをたずねた所、弓の握りはジャーマンスタイルであり右肩は常に下がっているとの事だった。

施術

治療では右腰部の椎間関節の運動機能障害を取り除く様にアプローチ。右起立筋の癒着にはグラストンテクニックを使用し、胸椎から腰椎にかけては右側方への可動性を加える操作を行う。肩甲帯のバランスも整え右下部僧帽筋エクセサイズを指導し筋力低下を改善させた。現在、腰痛は改善し再発もしていない。

今回のケースにおいて、腰痛は右椎間関節の運動機能障害により生じていたと思われます。しかし、それを引き起こした原因は演奏中のフォームにあり、ジャーマンスタイルであったためフレンチスタイルと比較すると右肩が下がり、その下げる動作を体幹の脊柱起立筋によって行っていたことに問題があったと思われます。本来ジャーマンスタイルでは、肩甲骨を下げる筋肉である下部僧帽筋により肩を下げて安定させる必要がありますが、脊柱起立筋を使い肩を下げると脊柱の右側の関節は圧迫を受け、今回のような腰痛は引き起こされやすくなります。また、負担のかかっていた起立筋は癒着が進み、グラストンテクニックが必要な状態でした。
コントラバスに限らず全ての楽器に言えることですが、演奏は体を安定させながらも筋肉の働きが必要になるため、偏ったフォームで演奏を続けると負担のかかっている筋肉には強い癒着が生じます。コントラバス以外でもフォームを変化させてから症状が生じた方は、身体に思わぬ負担が加わっている可能性がありますので一度ご相談ください。