嗅覚障害についてカイロプラクティック的アプローチ

嗅覚障害について

 においは鼻でかぎます。鼻のどこでかぐかというと、鼻の上の方にある嗅細胞(嗅神経細胞)でかぎます。においの分子は鼻の中に伝わり、さらに脳内へ伝わってゆきます。この伝わってゆく経路の中で何かしらの障害によって匂い機能が低下もしくはなくなるのが、嗅覚障害と言われています。 

 感 冒 後 嗅 覚 障 害(postviral olfactory disorder, PVOD)は日常生活であまり耳にしない病名であるが, 世界各国の嗅覚障害の臨床統計で上位に入る嗅覚障害の 重要原因疾患である.本疾患は感冒すなわち上気道の ウィルス感染罹患後に上気道炎症状が消失したあとも嗅 覚障害が持続する状態と定義されている。(1)

嗅覚障害は以下の年齢分布(図1)にあるように40代以降に発症し、50~70代の方で特に女性が罹患している。

嗅覚は系統発生的に古く、多くの動物で高度に発達していますが、視覚などの他の感覚に頼ってきたヒトではあまり発達していません。鼻粘膜の特定の場所に嗅上皮があります。ヒトの嗅上皮は鼻腔内の鼻中隔付近の上部に存在し、5,000万個の嗅神経を含んでいます。このように、嗅上皮は神経系が外界に最も接近している部分です。

嗅覚障害の分類

以下の三つに分類できます。その中でも、現在多くの方が悩んでいるのが、2の嗅神経嗅覚障害です。

  1. 気導性嗅覚障害
    においの分子が嗅細胞に物理的に到達できない。たとえば副鼻腔炎が原因の鼻ポリープ(鼻茸)やアレルギー性鼻炎が原因の鼻づまりや鼻中隔弯曲症が原因でにおいの分子が嗅細胞にとどく前にブロックされてしまいます。嗅細胞は正常です。
  2. 嗅神経性嗅覚障害
    嗅神経自身が傷ついてにおいを感じなくなります。感冒の原因となるウィルス感染で嗅神経が障害されたり、頭部外傷(骨折や強い脳しんとう)で嗅神経が切れてしまったりです。
  3. 中枢性嗅覚障害
    頭部外傷、脳腫瘍、脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病などで脳が障害された時です。たとえば、アルツハイマー型認知症では、病気のごく初期に嗅覚障害が現れるため、認知症の早期発見に役立つといわれています。

上記、嗅神経嗅覚障害の中で特に感冒後の嗅覚障害が問題になっております。

感冒後嗅覚障害は,上気道のウィルス感染罹患後に上気道炎症状が消失したあとも嗅覚障害が持続する状 態である.発症は中高年齢の女性に多く,嗅神経上皮および中枢嗅覚伝導路の傷害による神経性嗅覚障害と 考えられている.内視鏡検査,画像検査では異常を認めず,上気道炎罹患後に嗅覚低下を自覚したという病 歴が本疾患の診断の決め手となる.基準嗅力検査では中等症以上が大半で高度低下,脱失例が半分以上を占 める.治療は本邦では亜鉛製剤,漢方製剤,ステロイド点鼻および内服,ビタミン製剤,代謝改善剤などが 使用されている。但し、嗅覚障害の機能回復には長期間(1 年以上)か かることが多いとされている。その中で、嗅覚を刺激する嗅覚トレーニングが回復に有効との報告もある。

嗅覚刺激法(Olfactory training) :嗅覚トレーニングについて

嗅覚障害に対して、今後普及が期待されるものとして、嗅覚のリハビリテーション 的な「嗅覚刺激法(Olfactory training) 」があります。 匂いが全くしなくてもいろいろな種類のにおいを実際にかぎながら、以前に覚えて いるにおいを頭の中でイメージして思い出すようにしていくことで、においの感覚を 戻すようにします。

* ドイツの研究グループの報告(2)によると、神経性及び外傷性嗅覚障害の方に対して、 バラ、ユーカリ、レモン、クローブといった4種類のにおい物質を1日2回かぐことで 嗅覚が優位に改善したという報告があります 。その他にも嗅覚トレーニングの効果については研究報告(3)があります。

 

嗅覚トレーニングと頭蓋骨調整による相乗効果について

この嗅覚トレーニングにプラスして、頭蓋骨調整(カイロプラクティック)によって、鼻骨や蝶形骨などに刺激を加えることによって、嗅覚の回復を実感される方がおります。まだサンプル数は少なく、その嗅覚の持続性には疑問が付きますが、施術直後に嗅覚が改善することがあり今後母数を増やして行きたいと考えております。

 

文責:KIZUカイロプラクティック 院長 木津直昭

参考文献:

1)J. Japan Association on Odor Environment Vol. 45 No. 4 2014 『感冒後嗅覚障害:近藤健二氏』

2) Hummel T, Rissom K, Reden J, Hähner A, Weidenbecher M, Hüttenbrink KB. Effects of olfactory training in patients with olfactory loss. Laryngoscope. 2009 Mar;119(3):496-9. doi: 10.1002/lary.20101. PMID: 19235739.

3) Konstantinidis I, Tsakiropoulou E, Bekiaridou P, Kazantzidou C, Constantinidis J. Use of olfactory training in post-traumatic and postinfectious olfactory dysfunction. Laryngoscope. 2013 Dec;123(12):E85-90. doi: 10.1002/lary.24390. Epub 2013 Oct 4. PMID: 24114690.