頭痛に対してのカイロプラクティック施術プロトコル(五十嵐良樹)

頭痛施術プロトコル

頭痛は、国際頭痛分類では以下の頭痛だけではなく更に細分化されていますが、カイロプラクターの立場で頭痛に対して行う施術プロトコルについて解説いたします。

◾️カウンセリング
(最初に聞くべき質問事項やキーワード)
頭痛を特定する為の特別な検査がない為、カウンセリングには特に注意を払い患者の頭痛の特徴を把握する必要がある。

まず一次頭痛と二次頭痛を鑑別する為、下記項目を確認する:
1.     頭痛はいつ、どのように起きたか
2.     痛みの持続時間
3.     発症頻度
4.     発症部位
5.     痛みの質(ズキンズキンとした痛み、締め付けられるような痛みなど)
6.     痛みの強さ(寝込むか否か)
7.     頭痛の他に症状があるか(吐き気や嘔吐、前兆など)

★特筆すべき点
 • 頭痛のレッドフラッグ・サイン
1)       突然発症の頭痛
2)       今までに経験したことがない人生最悪の頭痛
3)       いつもと様子の異なる頭痛
4)       頻度と程度が増していく頭痛
5)       50歳以降に初発の頭痛
6)       神経脱落症状(言語障害や手足の麻痺など)や視力障害を有する頭痛
7)       癌や免疫不全の病態を有する患者の頭痛
8)       精神症状を伴う患者の頭痛
9)       発熱,項部硬直,髄膜刺激症状を有する頭痛
10)    Valsalva手技(息こらえなど)で増悪,体位で変化する

◾️検査
確認しておくべき検査と所見
・ バイタルサインや酸素飽和濃度(PO2)など
・ 動作観察

★特筆すべき点
・  二次頭痛の疑いがある場合には、専門の医療機関の受診を勧める

◾️4タイプの頭痛の判断基準

⭕️片頭痛
片側性
こめかみから側頭部
ズキンズキンする拍動痛
耐え難い・仕事や日常生活に支障がでる
体を動かすと痛みが増悪
吐き気・嘔吐を伴うことがある
光・音・臭いに過敏になる
前兆(羞明、閃輝暗点など)がある
母親に片頭痛の現病歴あるいは既往歴

⭕️群発頭痛
片側性
こめかみから側頭部
ズキズキする激痛
目球の痛み
症状は1~2時間ほど続く
夜間・就寝中に起こることが多い
1~2ヶ月毎日のようにほぼ同じ時間帯に繰り返し起こる
半年~2年おきに発症する

⭕️緊張型頭痛
多くは両側性
後頭下部から後頭部
圧迫・締めつけられるような痛み
我慢できる・仕事や日常生活に大きな支障はない
体を動かしても痛みは増悪しない
吐き気・嘔吐を伴うことはない
頸部や肩のコリを強く感じる

⭕️頸椎原性頭痛
片側性
非拍動性 鈍痛
後頭部、こめかみから目の奥、眼窩周囲
特定の頸部の運動や姿勢で誘発
頸椎可動域減少あるいは制限
皮膚節(Dermatome)に沿わない同側頸部、肩、上肢への関連痛
後頭下筋群の緊張と圧痛
かすみ目

◾️施術
何を狙ってどのように変化させたいからその施術を選んだのか
1.       片頭痛
・片頭痛発作時には、頸椎CMTや積極的な筋肉へのアプローチは避ける
・頸椎、頸胸移行部を中心としたCMT、フルスパインCMT
・仙骨頭蓋調整(特に側頭骨、前頭骨、蝶形骨)
・耳孔へ Insufflation
・頸椎前弯の正常化
・筋バランスを整える
・サプリメント: ビタミンB2
・誘発要因はできるだけ避ける(チョコレートや赤ワイン摂取、光の強い場所など)
・片頭痛に対して即効性は低いが、継続的な治療により大きな改善が見られる

2.       群発頭痛
・基本的には片頭痛のマネジメントと同様
・サプリメント: ビタミンD

3.       緊張型頭痛
・即効性が期待できる
・頸椎CMT、特にC2,T1
・筋緊張緩和、特に頸部伸筋群、後頭下筋群
・温湿療法
・サプリメント: ビタミンE(血行促進)、カモミール(リラックス)、ローズマリー
・状態維持と再発防止のためフルスパインのケア

4.       頸椎原性頭痛
・即効性が期待できる
・頸椎CMT、特に後頭骨と環椎
・仙骨頭蓋調整(後頭骨、蝶形骨)
・頸部安定性の為、頸部筋バランスを整える
・後頭下筋群リリース(特に小後頭直筋)

★気をつけるべきこと
片頭痛発作時の頸椎マニピュレーションは症状を悪化させる場合が多い
マネジメントの途中でもレッドフラッグが現れた場合には、即座に専門医に委ねる
脳過敏症候群 ー 薬物乱用性頭痛

エクササイズ

・ 頭痛に特化したエクササイズは通常指導しない

参考資料

The Chiropractic Report, Cervicogenic Headache,September 2010 Vol.24 No.5
DE Enix, F Scali, ME Pontell, The cervical myodural bridge, a review of literature and clinical implications, J Can Chiropr Assoc 2014; 58(2): 184-192
Chaibi et al., Chiropractic spinal manipulative therapy for cervicogenic headache: a single‑blinded,   placebo, randomized controlled trialBMC Res Notes (2017) 10:310
国際頭痛分類第3版、日本頭痛学会、国際頭痛分類委員会、2018

文責:五十嵐良樹 DC(KIZUカイロプラクティック・テクニカルマネージャー)

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 五十嵐良樹DC

資格:

Doctor of Chiropractic (DC)
柔道整復師免許
柔道整復師専科教員免許
ICAK認定アプライドキネシオロギスト
カイロプラクティック機能神経学卒後教育課程修了
オーストラリアAHPRA登録カイロプラクター
日本カイロプラクティック登録機構 登録カイロプラクター

経歴:

米国ナショナルカイロプラクティック大学(現ナショナル健康科学大学)卒、1994
オーストラリアRMIT大学日本校専任講師、1996-2009
オーストラリアRMIT大学日本校付属外来センター部長、2005-2009
オーストラリアMurdoch大学客員上級講師、2009-2010
豪州Murdoch大学インターナショナルセンタージャパン教務部長、2009-2010
KYSカイロプラクティックオフィス院長、2007−現在
米国Carrick Institute機能神経学卒後教育課程 公認講師、2010-13
学校法人山野学苑山野医療専門学校専科教員、2011−現在
学校法人山野学苑山野医療専門学校付属接骨院院長、2011−現在
KIZUカイロプラクティック テクニカルマネージャー 2018年4月~