困った事が起きた時に気持ちが沈む。それは、ちょっとペースを落として慎重に考えた方が良いということをこころが伝えようとしていると考えられる。不安になったり細かい事が気になったりするのも同じように意味がある。丁重に進めたほうがいいという「こころの声」である。こうした事は誰でも体験する。
精神疾患とういのは、それが行き過ぎて辛くなりすぎたり日常生活に支障が出てきたりする時、医療の手助けが必要だと表現する為に使われる言葉で、それ以上に特別な意味はない。だからこそ「こころの声」に耳を傾けることが大切なのである。こころの声を理解する事は本人はもちろん、周りの人にとっても貴重だ。例えば、自分にとって親しい人、大切な人が悩んでいるとつい励ましたくなる。早く元気になってほしいと思うからだ。しかし、それではこころの声を聞くことができない。自分の声の押し付けになってしまうことさえある。そうした時に悩んでいる人のこころの声に耳を傾けてみると、本当の意味での支えが見えてくる。そして悩んでいる人だけではなく、手助けする人のこころも豊かにするはずである。
日経新聞に掲載されていた、慶応義塾大学保健管理センター教授、大野 裕先生のお話からです。悩んでいる人がいたら、確かに自分に置き換えてはみるが、それはただの自分の声の押し付けになってしまって、本当のこころの声に耳を傾けていない気がします。自分のこころの声、そして周りの人のこころの声、そんな時こそ耳を澄まして聞いてみようと思います。