「巻き肩」のメカニズム考察
以前のブログで取り上げた「前肩症候群」ですが
前肩というより肩甲骨が前に行って巻き込んでいる状態なので、改めて「巻き肩」として取り上げてみます。
2014年4月にイギリスカイロプラクターズ連合協会が以下のような調査報告をしています。
スマホやタブレットを眺めるために頭を下げて背中を丸めた姿勢でいると、心筋の動きが限られ十分な呼吸ができない。また、あばら骨も適切に動かせなくなるので肺と心臓が完全な状態で機能できなくなると指摘しています。脊柱後弯症を患う高齢者はそうでない人と比べて死亡率が高く、体脂肪率30パーセント以上の人の死亡率が高くなるのと同じ割合だといいます。
この姿勢で注目されるのが、「巻き肩」です。
パソコン使用時間が長くなるのと比例するように深刻化しています。筋肉量が少ない女性に特に多い症状です。
★なぜ巻き肩になるのでしょうか?
①座り仕事が多いこと
②パソコンやスマホなど、身体の前で作業する時間が長いこと
③体幹の筋力が弱いこと
④肩甲骨周辺の筋バランスの崩れ
⑤肩甲骨の正しい位置が認識されていないこと
★巻き肩による影響は?
①首や肩の可動域が狭くなる
②首や肩の痛みや凝りの原因になる
③ストレートネックになりやすい
④胸郭出口症候群の原因になる
⑤猫背になりやすい(胸椎の神経伝達機能の低下)
⑥呼吸が浅くなる
この中で特に気になるのが、⑥の呼吸についてです。
患者さんを見ていると、女性で呼吸が浅くなっている人が多い印象があります。
浅呼吸では酸素の供給量がへります。大幅にです。
人間の細胞は酸素がなくなると、死んでしまいます。
それほど重要な酸素の供給ですから、免疫疾患、循環障害など様々な障害や病気の原因にも成りうるのです。
最近、女性に多いと言われている「無呼吸症候群」も無関係ではないと思っています。
また、うつ病にも影響を及ぼしていると考えます。
下図のように、正常な胸郭に対する肩甲骨の位置は背面から35度の角度ですが、前肩でのパソコン作業の場合は70度近くになっています。この状態では、肩関節は正常に動かすことはできません。
また胸郭が十分に膨らまない(肋骨が動かない)ので浅呼吸になってしまうのです。
【正常】
【パソコン操作時】
「巻き肩」のメカニズム考察
胸椎の後彎を過剰にさせることにより肩甲帯での連動がくずれることにより、胸椎自体の神経伝達機能の低下と僧帽筋上部線維、肩甲挙筋など肩甲骨を上げる筋が拘縮を起こし、逆に肩甲骨下制する筋群が弱化することが一因であると考える。
また、この姿勢を続けていると、浅呼吸になり呼吸筋である吸息筋と呼息筋の働きが悪くなり、正常機能していない可能性がある。
特に吸息筋が集まる胸の上部の筋肉に拘縮や癒着が起きていると考えられる。
また呼吸筋では一番大切と考えられる横隔膜の機能低下も大きな要因と考える。
吸息筋:僧帽筋、胸鎖乳突筋、斜角筋群、外肋間筋、横隔膜、脊柱起立筋
呼息筋:内肋間筋、外腹斜筋、腹横筋、内腹斜筋、腹直筋
この呼吸と「巻き肩」との関係ですが、チェックする方法として、両手を交差するように胸に当てて、呼吸を深くしてみてください。
胸の上の部分が、深く吸いこんだ時に大きく広がる感覚が両手に感じれば、正しく吸息筋が働いています。あまり動いていないようでしたら、早期に専門家にみてもらうようにしましょう。
*冒頭のイギリスカイロプラクティック協会の記事参照元
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2589695/Sending-text-kill-Phone-users-hunch-send-messages-affecting-breathing-causing-cardiovascular-problems-later-life.htm