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筋バランスと障害の関係~②アスリートに多発するアキレス腱の障害

今回は、様々なアスリートに多発する「アキレス腱の障害」についてお話いたします。
アキレス腱は主に腓腹筋とひらめ筋により構成されています。これらの筋群は、使用頻度も多く、疲労や使い方によっては、「筋バランスの拮抗と障害」が起る可能性の高い部位と考えています。では、なぜこのアキレス腱に障害が起きやすいのでしょうか?
それは、足関節の使い方にあります。やはり足関節にも屈筋群と伸筋群があります。底屈させるのが屈筋群で、その代表が腓腹筋やひらめ筋です。
これら屈筋群は強固な筋肉群で1トン以上の錘をぶら下げても耐えられると言われています。そして、拮抗する伸筋群の代表は前脛骨筋や長短趾伸筋ですが、これらの伸筋群は日常生活を見てみればわかることなのですが、例えば、歩行の際に足先を挙げる時や車のブレーキペダルに足をかけている時などあまり負荷がかかる動作は少ないのです。まして歩行の際に、靴(ブーツ)を履いているとほとんど使わなくていい状態なのです。

皆様も実験してみてください。立って、踵で立つ感じにして足先を宙に浮かしてみてください。この時にアキレス腱は伸びるように働かなくてはいけません。今度は逆につま先立ちをするようにしてください。この時はアキレス腱が縮まるように働いています。この「伸びた状態から縮んだ状態」のアキレス腱の正常な長さなのです。
しかし実際は、このアキレス腱の長さは使っていません。逆に縮ませて使う事が多くなっているのです。
特にスポーツしていると縮んだ状態で使うことが多くなるので自然に屈筋と伸筋のバランスは崩れていきます。そして徐々に関節腔を狭めていき、アキレス腱を伸ばすことができなくなってしますのです。その時に起るのが、アキレス腱の筋・筋膜の癒着や肥厚(下図③)です。この存在により徐々に関節腔が狭まり(下図④)、行く行くは関節がぶつかってしまうのです。結果、アキレス腱の痛みや腓腹筋とひらめ筋の肉離れの原因になってしまうのです。

*アキレス腱の治療について
この筋バランスの拮抗を取り戻すためには、筋の癒着を取り除く必要があります。ただ、単にマッサージやストレッチなどで筋を伸ばすだけでは、改善しません。過負荷にさらされていた筋・筋膜は、伸び縮みする機能が低下してしまうことが多いのですが、このような状態になるとストレッチは出来るだけ避けた方が懸命です。(ストレッチしますと伸びない筋組織の存在が関節腔を狭め、逆効果になるからです。)これらの筋に対しては、最大可動域の中でグラストンテクニックの施術をすることにより筋・筋膜の癒着を取り除き、筋自体の質をあげ、その後徐々にストレッチを加え、正常な伸縮が出来る状態にしてから伸筋群の強化・運動連鎖を考慮に入れた使い方を指導することがベストな施術と考えています。

アキレス腱グラストンテクニック施術後の変化


       治療前                3回治療後


*上記の写真より3回治療後(週に一度)には、足首の角度が鋭角になっていて、アキレス腱が伸びるようになったのがわかると思います。以下のイラストがそのメカニズムです。③が筋・筋膜の癒着であり、④その時に関節腔がないことを示しています。①は癒着が取り除かれ伸びるようになり、②は関節腔には空間ができたところです。

      治療前                        治療後

* 以下患者さんのコメントです。
「初めアキレス腱のストレッチを行うと足首に詰まった感覚があり伸ばせなかったのが、グラストン施術後には、その足関節の詰まった感覚がなくなりスムーズに深く伸ばせるようになった。」
*今回は触れませんでしたが、このアキレス腱障害の原因として足底アーチの低下が大きな影響を及ぼしていると考えています。