記事一覧

筋バランスと障害の関係~①投球動作の障害(野球肩)について


 上の写真は綺麗な投球フォームで投げる北海道日本ハムファイターズの斉藤祐樹投手です。(日本ハムファンではありませんが・・)今年はダルビッシュ投手の穴を埋め、エースとして素晴らしい活躍です!
 ところで、今回はピッチャーの投球動作においての「筋バランスの拮抗と障害」についてお話いたします。投手でよく障害を起こすのが肩や肘ですが、この投球動作の際に肩の内旋と外旋の筋バランスが重要になるのです。
投球動作の際、最も肩を痛めやすいと言われているのがリリースからフォロースルーにかけてです。投球肩が最大外旋した状態から、ボールがリリースされるところまでに急激な内旋ひねり動作を行います。この時に肩関節内部のローテーターカフが重要な役割を果たすのですが、その中でも重要なのが、最大外旋から内旋へのシフトなのです。この筋バランスが崩れるとパフォーマンスは落ちますし肩や肘を痛めてしまうのです。
肩関節の外旋筋は、主に棘下筋、小円筋です。そして代表的内旋筋は、肩甲下筋です。これらの拮抗バランスが重要になるのです。もちろんその他の肩甲骨リズムを作る筋肉や体幹の筋バランスも重要ですが、今回は、この内旋と外旋についてフォーカスして説明いたします。
肩を後ろに引いた最大外旋時、野球肩では外旋筋が収縮性の緊張が起こります。同時に内旋筋では伸長性の緊張が起こっています。これをボールがリリースする迄の間に逆転させる必要があるのです。結果、リリースからフォロースルーにかけては先ほどの反対の現象が起きるのです。外旋筋では伸長性収縮が起き、腕から肩にかけて伸びきるのを制御します。内旋筋では、肩をスムーズに内旋させ関節腔に遊びを作っているのです。
下の図は、肩の内旋・外旋の模様をイラストにしています。


このイラストの場合、①は正常な外旋筋と②余裕のある関節腔を示しています。③は肩の外旋筋の筋・筋膜に癒着が生じスムーズな内旋ができない様子が描かれています。癒着が存在することにより、④関節腔が狭いのでスムーズな内旋が出来なくなっているのです。結果、肩では、パフォーマンスが低下し、障害が起きる可能性が高いのです。また、この状態を簡単に説明すると(投手が感じている状態)肩の前が緩んだ感じで、後ろ側が緊張したバランスになっている状態なのです。そしてこの状態が悪化すると関節唇障害やインピンジメント障害などを起こす危険性があるのです。

*この野球肩の治療について:この筋バランスの拮抗を取り戻すためには、筋の癒着を取り除く必要があります。ただ、単にマッサージなどで筋を伸ばすだけでは、改善しません。過負荷にさらされていた筋・筋膜は、伸び縮みする機能が低下してしまうことが多いのですが、このような状態になるとストレッチは出来るだけ避けた方が懸命です。(ストレッチしますと伸びない筋組織の存在が関節腔を狭め、逆効果になるからです。)これらの筋に対しては、グラストンテクニックで癒着を取り除き、筋自体の質をあげ、その後徐々にストレッチを加え、正常な伸縮が出来る状態にしてからセラバンド等でのトレーニングにより運動連鎖の回復を計るのがベストと考えます。