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箸・ボールペンの持ち方とマウスの使い方による親指の痛み

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ボールペンなどの筆記用具を上の写真のような持ち方(親指の先端を使わずに付け根で持つ)をしている人を多くみかけます。このような使い方をしていると、親指の関節に偏った力が加わり、筋の癒着が進行し、指に力が入らないとか、曲げられないと言った障害の原因になります。
実は、この使い方ですが、他の日常生活においても同じ使い方をしていることが多いのです。これは数年前からですが、外食した時などに、他の人の箸の使い方に注目するとこの握り方(まさしく箸を「握っている」感じなのです)をしている人が意外に多いことに驚かされます。

この持ち方をしている人は、PCマウスも同じ使い方をしている可能性が高いのです。上写真の患者さんは、PCデザイナーでマウスの使いすぎにより親指を曲げられない痛み症状で来院されました。この方はマウス以外でも、ボールペン・ゴルフのグリップ・洗濯ばさみを使う時も同じ使い方でした。では、なぜこのような持ち方をしていると障害の原因になるのでしょうか?

それは、先述した親指への偏った力だけではなく、「親指の先を使って持った時」と「付け根で持った時」で手首から肘、腕、そして肩への力のかかり方がまったく違うのです。言い換えれば「付け根で持った時」の持ち方は、「肩に力が入った状態」なのです。逆に「親指の先を使って持った時」の持ち方は、脱力した状態なのです。皆さんも一度試しに比べてみてください!


*この持ち方ですが、気になるのが、ネイルアートをしている女性たちです。指先を使いにくいので、どうしてもこの使い方になるのではないかと危惧しています。

筋バランスと障害の関係~②アスリートに多発するアキレス腱の障害

今回は、様々なアスリートに多発する「アキレス腱の障害」についてお話いたします。
アキレス腱は主に腓腹筋とひらめ筋により構成されています。これらの筋群は、使用頻度も多く、疲労や使い方によっては、「筋バランスの拮抗と障害」が起る可能性の高い部位と考えています。では、なぜこのアキレス腱に障害が起きやすいのでしょうか?
それは、足関節の使い方にあります。やはり足関節にも屈筋群と伸筋群があります。底屈させるのが屈筋群で、その代表が腓腹筋やひらめ筋です。
これら屈筋群は強固な筋肉群で1トン以上の錘をぶら下げても耐えられると言われています。そして、拮抗する伸筋群の代表は前脛骨筋や長短趾伸筋ですが、これらの伸筋群は日常生活を見てみればわかることなのですが、例えば、歩行の際に足先を挙げる時や車のブレーキペダルに足をかけている時などあまり負荷がかかる動作は少ないのです。まして歩行の際に、靴(ブーツ)を履いているとほとんど使わなくていい状態なのです。

皆様も実験してみてください。立って、踵で立つ感じにして足先を宙に浮かしてみてください。この時にアキレス腱は伸びるように働かなくてはいけません。今度は逆につま先立ちをするようにしてください。この時はアキレス腱が縮まるように働いています。この「伸びた状態から縮んだ状態」のアキレス腱の正常な長さなのです。
しかし実際は、このアキレス腱の長さは使っていません。逆に縮ませて使う事が多くなっているのです。
特にスポーツしていると縮んだ状態で使うことが多くなるので自然に屈筋と伸筋のバランスは崩れていきます。そして徐々に関節腔を狭めていき、アキレス腱を伸ばすことができなくなってしますのです。その時に起るのが、アキレス腱の筋・筋膜の癒着や肥厚(下図③)です。この存在により徐々に関節腔が狭まり(下図④)、行く行くは関節がぶつかってしまうのです。結果、アキレス腱の痛みや腓腹筋とひらめ筋の肉離れの原因になってしまうのです。

*アキレス腱の治療について
この筋バランスの拮抗を取り戻すためには、筋の癒着を取り除く必要があります。ただ、単にマッサージやストレッチなどで筋を伸ばすだけでは、改善しません。過負荷にさらされていた筋・筋膜は、伸び縮みする機能が低下してしまうことが多いのですが、このような状態になるとストレッチは出来るだけ避けた方が懸命です。(ストレッチしますと伸びない筋組織の存在が関節腔を狭め、逆効果になるからです。)これらの筋に対しては、最大可動域の中でグラストンテクニックの施術をすることにより筋・筋膜の癒着を取り除き、筋自体の質をあげ、その後徐々にストレッチを加え、正常な伸縮が出来る状態にしてから伸筋群の強化・運動連鎖を考慮に入れた使い方を指導することがベストな施術と考えています。

アキレス腱グラストンテクニック施術後の変化


       治療前                3回治療後


*上記の写真より3回治療後(週に一度)には、足首の角度が鋭角になっていて、アキレス腱が伸びるようになったのがわかると思います。以下のイラストがそのメカニズムです。③が筋・筋膜の癒着であり、④その時に関節腔がないことを示しています。①は癒着が取り除かれ伸びるようになり、②は関節腔には空間ができたところです。

      治療前                        治療後

* 以下患者さんのコメントです。
「初めアキレス腱のストレッチを行うと足首に詰まった感覚があり伸ばせなかったのが、グラストン施術後には、その足関節の詰まった感覚がなくなりスムーズに深く伸ばせるようになった。」
*今回は触れませんでしたが、このアキレス腱障害の原因として足底アーチの低下が大きな影響を及ぼしていると考えています。

筋バランスと障害の関係~①投球動作の障害(野球肩)について


 上の写真は綺麗な投球フォームで投げる北海道日本ハムファイターズの斉藤祐樹投手です。(日本ハムファンではありませんが・・)今年はダルビッシュ投手の穴を埋め、エースとして素晴らしい活躍です!
 ところで、今回はピッチャーの投球動作においての「筋バランスの拮抗と障害」についてお話いたします。投手でよく障害を起こすのが肩や肘ですが、この投球動作の際に肩の内旋と外旋の筋バランスが重要になるのです。
投球動作の際、最も肩を痛めやすいと言われているのがリリースからフォロースルーにかけてです。投球肩が最大外旋した状態から、ボールがリリースされるところまでに急激な内旋ひねり動作を行います。この時に肩関節内部のローテーターカフが重要な役割を果たすのですが、その中でも重要なのが、最大外旋から内旋へのシフトなのです。この筋バランスが崩れるとパフォーマンスは落ちますし肩や肘を痛めてしまうのです。
肩関節の外旋筋は、主に棘下筋、小円筋です。そして代表的内旋筋は、肩甲下筋です。これらの拮抗バランスが重要になるのです。もちろんその他の肩甲骨リズムを作る筋肉や体幹の筋バランスも重要ですが、今回は、この内旋と外旋についてフォーカスして説明いたします。
肩を後ろに引いた最大外旋時、野球肩では外旋筋が収縮性の緊張が起こります。同時に内旋筋では伸長性の緊張が起こっています。これをボールがリリースする迄の間に逆転させる必要があるのです。結果、リリースからフォロースルーにかけては先ほどの反対の現象が起きるのです。外旋筋では伸長性収縮が起き、腕から肩にかけて伸びきるのを制御します。内旋筋では、肩をスムーズに内旋させ関節腔に遊びを作っているのです。
下の図は、肩の内旋・外旋の模様をイラストにしています。


このイラストの場合、①は正常な外旋筋と②余裕のある関節腔を示しています。③は肩の外旋筋の筋・筋膜に癒着が生じスムーズな内旋ができない様子が描かれています。癒着が存在することにより、④関節腔が狭いのでスムーズな内旋が出来なくなっているのです。結果、肩では、パフォーマンスが低下し、障害が起きる可能性が高いのです。また、この状態を簡単に説明すると(投手が感じている状態)肩の前が緩んだ感じで、後ろ側が緊張したバランスになっている状態なのです。そしてこの状態が悪化すると関節唇障害やインピンジメント障害などを起こす危険性があるのです。

*この野球肩の治療について:この筋バランスの拮抗を取り戻すためには、筋の癒着を取り除く必要があります。ただ、単にマッサージなどで筋を伸ばすだけでは、改善しません。過負荷にさらされていた筋・筋膜は、伸び縮みする機能が低下してしまうことが多いのですが、このような状態になるとストレッチは出来るだけ避けた方が懸命です。(ストレッチしますと伸びない筋組織の存在が関節腔を狭め、逆効果になるからです。)これらの筋に対しては、グラストンテクニックで癒着を取り除き、筋自体の質をあげ、その後徐々にストレッチを加え、正常な伸縮が出来る状態にしてからセラバンド等でのトレーニングにより運動連鎖の回復を計るのがベストと考えます。

アスリートに重要な「脱力」

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 メジャーリーグ・ダルビッシュ有投手(テキサスレンジャーズ)の快投が続いています。観戦していると嬉しくなるし、本当に頼もしい限りです。そんな中、先日ハーラートップの6勝目をあげた試合で「脱力投球」という記事がありました。試合後のコメントでも、「投球フォームは力を抜いた。軽く投げている感じ」と話していました。
 この「脱力」ですが、アスリートにとってはとても重要です。以前このコラムでも「肩の力を抜く」大切さをお話しましたが、特にスポーツ選手では、欠かせないことなのです。投球で大切なのが、下肢からスタートして体幹、そこから「しなるように肩―腕―手首へと連動」が必要になります。安定した下肢から体幹があってこそ、この「脱力」ができるのだと思います。
その「脱力」のスペシャリストが日本の球団にもいます。それはヤクルトスワローズの宮本慎也選手(上写真)です。(ちなみに僕はヤクルトファンではないですが)先日の2000本安打達成もすばらしいのですが、なんと言っても連続守備機会無失策の日本新記録を塗り替えました。安定した下半身がそれを可能にしているのだと思います。僕が言うのも何ですが、見ていてエラーしそうにない(ヤクルトファンではないので)、本当に芸術の域にある守備を見せてくれます。
そんな宮本選手の「肩の力の抜けたすばらしい打撃と守備」を可能にしているのが、「丹田」の強さではないでしょうか?
では、なぜ丹田に力が入ると「脱力」ができるのでしょうか?その答えは「筋バランスの拮抗」が重要な役割を担っているのだと思います。
例えば、バレエにおいて骨盤を立てることが重要ですが、それには「丹田」を意識した筋バランスの拮抗が必要になります。これが引き上げ動作につながり、体幹が長軸(たて)に伸びることができるのです。その時に同時に起こるのが肩甲骨の下制です。この連動した筋バランスにより、しなやかな四肢の動きが可能になっているのだと思います。それが丹田を使った時に起こる「肩の力が抜ける」現象なのです。これが「脱力」なのです。
逆に言えば、この丹田に力が入っていない拮抗した筋バランスでない時には、実は肩に力が入ってしまうのです。こうなるとパフォーマンスは落ちるし、障害を生みやすいのです。それが「脱力」の反対である「緊張」状態なのです。
次回は、この「筋バランスと障害の関係」についてお話します。

以前、取り上げた「肩の力の抜き方」についてです。
「肩に力が入る・肩の力を抜く」

iPad ショルダーにご用心!

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最近、あのNEWアイパッドを購入しました。画像が本当に綺麗だし、解剖のアプリなど今後重宝しそうです。ただ、使った感想は、自分が老眼であるのもありますが「とにかく疲れる」です。どこが疲れるかって聞かれれば「目と肩です。」
そんな話を患者さんとしていると、その患者さんから「今もっている雑誌にiPad Shoulderにご用心って記事が載ってましたよ」と言われました。早速拝見させて頂くと、下記のような記事が掲載されていました。
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Health Risks of Tablet PCs
Beware of the so-called...ohh,the"iPad shoulder." Researchers reckon/ tablet computers can encourage poor posture. Apparently.using an iPad on your lap means you look down more. That puts pressure on your joints. That can lead to aching shoulders and neck injuries. So the people who think about these things at the Harvard School of Public Health suggest you prop it up on a table,preferably in an elevated position.
「iPad肩」にご用心! /タブレットPCの使用は、姿勢を悪くするおそれがあると研究者らは考えている。話によるとiPadを膝の上に置いて使うと下を向く時間が増えるらしい。そうすると関節に負担がかかる。その結果、肩が痛くなったり、首を傷めてしまったりするおそれがある。そこで、この問題について考えたハーバード公衆衛生大学院の研究者らは、iPadを使うときは、机の上に置いて、できれば高めの場所で何かに立てかけるように勧めている。
*被験者15人にiPadなどのタブレットPCを使ってもらい、姿勢の違いによる首や肩への負担を分析した結果、膝の上に置いて使うのが一番負担が大きかった。対して、机に置いて画面を自分のほうに傾けるのが、最も負担が少ない姿勢だった。研究者らは、この発見がより使いやすいタブレットPCの開発に役立ってほしいと考えています。
(january 26,2012 CNN ENGLISH より引用)
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以前コラムで書いた「マウス症候群」や「スマホ症候群」もそうでしたが、これらの電子機器は使い方によっては身体に不調を来たします。そしてこの「iPadショルダー」も同じです。iPadは軽いと言ってもやはり長時間持つには、上部僧帽筋が緊張し、「肩が上がり、力が入る」状態になってしまうのです。その上、1時間も下を向いていたら「肩は凝り、目は疲れ、」と自ずと結果は見えています。ただ、使い方によっては、肩への負担は軽減できます。今後、急増するであろうiPadユーザーに静の姿勢と動の姿勢の大切さを伝えていこうと思います。
昨日、眠りが浅いと訴えている患者さんに「寝しなに光物(ひかりもの)はやめましょう!」と忠告いたしました。この根拠はないのですが、寝る前にパソコンやスマホなどの画面を見た後に寝ると、その日の眠りの質が落ちる気がするのです。ハーバードの教授達にこれも調べてもらいたいです。宜しくお願いいたします!

マウス症候群についてのコラム
スマホ症候群についてのコラム