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ドケルバン病の治療経過(赤ちゃん抱っこ時の親指から手首の痛み)


【1月撮影】                    【2月撮影】  

 ドケルバン病は赤ちゃんを抱っこする時に親指から手首にかけての痛みや機能障害として発症することが多い疾患です。

また、マウスやスマホなどの電子端末の使用頻度の増加も悪影響を与えています。(実際に赤ちゃん抱っこしていなくても、同じような障害で来院されています)

上の写真は前回の35歳のお母さんの一か月後の写真を比べたものです。痛みは消失し、明らかに指の変形も改善してきています。

この状態では、母指伸筋腱に炎症や肥厚、癒着がなくなり、結果、手のひらを開こうとすると
下の写真のように綺麗に開くことが可能になるのです。

ただ、母指の中手骨と大菱形骨との関節の変位はすこし残っています。

近年は、手や指の痛みや曲がらない等の障害で来院される方が増えています。
iphoneやすまとーフォンなどの電子端末の影響も大きいと思われますが指の使い方というのも軽視できないと考えています。

ドケルバン予防のための「正しい赤ちゃん抱っこ法」等、今後もドケルバン病の研究を続けてまいります。


■過去のブログ
*ドケルバン病の原因と治療
http://www.kizuchiro.com/director_blog/diary.cgi?no=226
*ドケルバン病の研究
http://www.kizuchiro.com/director_blog/diary.cgi?no=223

*親指の使い方に関しては
http://www.kizuchiro.com/director_blog/diary.cgi?field=3

「五十股」〜急増する30代から始まる股関節痛

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 先日、新聞社より「最近、五十股が多いらしいのですが、先生のところでは、そのような患者さんは来院されますか?」
という質問がありました。

「五十股?」
この「五十股」とは以前、テレビで報道されたらしいのですが、40-50代で頻発する股関節の障害で、肩の障害である「五十肩」の股関節版のようなものなのです。

そう言われてみると確かに股関節の障害の患者さんは増えています。

それも30-40代の女性で股関節痛を発症しているケースが多いのです。男性の場合は50~60代に多く発症しています。
この男女差はなぜなのでしょうか?

それは、女性の場合、骨盤の形状が外側に広いということもあるのですが、身近な問題として「反り腰」にあると思っています。それは、股関節周りの筋バランスが大きく影響しているのです。
(*日本整形外科学会のガイドラインでも腰椎の前彎が強くなると変形性股関節症になりやすいというエビデンスも公表されています)
反り腰と股関節痛は連動している障害と捉えていいと思います。なぜなら反り腰になると大腿骨頭が寛骨臼上(腸骨)で前方に位置しやすくなり、外旋もしやすい状態になります。
結果、屈曲、内転、内旋制限を発症するのです。

そして、その反り腰の原因でもある、「骨盤アーチ」の崩壊が股関節痛の最たる原因と考えています。

1日15時間座位も珍しくない現代の社会環境下において、骨盤アーチの重要性については過去のコラムでも取り上げましたが、骨盤アーチの崩壊は両足先からの力のベクトルが身体の中心に集まらず外側に逃げることが原因で起こります。
結果、足の外側の筋肉が固まり、拘縮や癒着を起こすのです。それが長年の蓄積で股関節の機能障害(五十股)につながるのです。

★五十股の初期症状
1.動き始め(立ち上がりや方向転回など)に股関節に痛みや違和感
2.あぐらで左右の足の開きが違う(痛みも伴う)
3.レントゲン像では正常

★中期以降(変形性股関節症)
4.足の長さの違いを感じる
5.足の爪切りや靴下を履くのが辛い
6.歩行時、足を引きずる
7.階段の昇り降りが辛い
8.レントゲン像での関節間隙の挟小化

では、対処法と予防法は?
股関節痛は、上記のような初期症状の時に適切な治療が必要です。セルフケアとして出来るものとして、大腿四頭筋(特に外側)のストレッチが有効です。中期以降になると歩行自体に支障が出てくるので、筋力の低下が顕著です。また癒着も進行していますので、ストレッチも逆効果になることが多くリスクが高まります。
初期症状の時に、正しい歩行を習慣化することが効果的な予防法になります。ここで言う、正しい歩行法というのが肝心要です!ただ闇雲に歩いていては、効果的な骨盤アーチは形成されないのです。
その歩行法とは、以前より推奨している「パワーハウスウォーキング」が最適です。

この「五十股」という質問を新聞社から受けたおかげで、股関節痛が多いことを実感しました。
そして股関節痛というサインを見逃してはいけないと改めて思っております。
若い年代であればあるほど早期に治るのですが、今後も続くであろう長時間の座位、短時間の歩行や運動が長年続ければ、その後「変形性股関節症」になるリスクが高まるということなのです。
これは来院される患者さんにフィードバックし、もっと多くの人に警鐘を鳴らしていくべきであると考えています。整形外科領域では、変形性股関節症に対して人工股関節をすすめる場合があります。しかし、状態によりますが、これはあくまで最終的な手段としてください、あきらめず自分の股関節を保ちながら、カイロプラクティックでの治療も可能です。股関節痛で悩んでおられる方がいらしたら一度ご相談ください。

注:ちなみに新聞社の方には、変形性股関節症の前段階の患者さんが「五十股」だと思いますと答えました。

詳しく言えば、変形性股関節症は慢性的な股関節痛で、レントゲン像で関節間隙の狭小化があり、股関節の可動域(特に内転、屈曲)に制限が見られ、重篤な症状では歩行困難に陥いります。

ただし、この変形性股関節症は先天的に股関節の形状に異常がある場合(臼蓋不全、先天性股関節脱臼等)に発症頻度は高くなります。その先天的な異常はなく、慢性的な股関節痛がこの「五十股」と定義した方がいいと考えます。

「骨盤の開き」考察
Part1
http://www.kizuchiro.com/director_blog/diary.cgi?no=120
Part2
http://www.kizuchiro.com/director_blog/diary.cgi?no=121

題して「パワーハウスウォーキング」
http://www.kizuchiro.com/director_blog/diary.cgi?no=140

KIZUカイロプラクティックのホームページはこちら
http://www.kizuchiro.com/kizu02/

ドケルバン病の研究

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昔から産後の女性に多いとされる「ドケルバン病」ですが、最近では、パソコンなどの電子端末の使い過ぎで発症するケースも珍しくありません。

このドケルバン病は親指を伸ばす筋である、短母指伸筋腱と長母指外転筋が手首の背側にあるトンネル(腱鞘)で起こる腱鞘炎です。

このトンネルの中を通過する腱に炎症が起こった状態で、腱の動きがスムーズでなくなり、手首の母指側から手首かけてが痛み、腫れる場合もあります。母指や手首を広げたり、動かしたりするとこの場所に強い疼痛が走ります。


原因としては、主にこれら二つの腱を使いすぎたことにより生じます。子供を抱っこする機会が増える出産後の女性や更年期の女性にも多く見受けられます。
また、最近ではパソコンのキーボード操作やマウス操作、そしてスマホを使う方にも多く発症する傾向のようです。

病態としては、母指の使いすぎによる負荷のため、腱鞘が肥厚したり、腱の表面が傷んだりして、さらにそれが刺激し、悪循環が生じると考えられています。


診断は、上記の部位に腫脹や圧痛があり、母指を他の指で包み込み、そのまま小指側に曲げると痛みが増強することで診断します。
(上写真:フィンケルシュタインテスト)

 では、なぜ、この障害が起きる人と起きない人がいるのでしょうか?私の研究では、このドケルバン病は、指を屈曲して使う時に関節を伸展させて使うからだと考えています。

その結果、あまり親指を使わない人でも生じることがあるのです。例えば、子供を抱っこする時に親指を屈曲して使えば、この腱に負荷はかかりません。しかし他の4本の指を屈曲して使い、親指だけ使わないとしたら、親指は伸展位にあります。

この現象がドバルゲン病の正体であると考えます。

この障害の治療ですが、これらのメカニズムを考慮に入れ、伸展筋に負荷がかからないように親指の関節を正しい配列にすることにより治癒へ導かれます。
(腱の癒着にはグラストンテクニックが効果的です)
この障害が起きた時のテーピング法をご紹介いたします。以下のように軽く張りを持たせキネシオテープを親指から手首にかけて貼るといいでしょう。このテーピングをした後に、先ほどのテストを行ってみてください。上手く貼れていれば先ほどの痛みが軽減されているはずです。

参考資料:日本整形外科学会

*親指の使い方に関しては以前、ブログで取り上げておりますのでご興味ある方はご覧ください。
http://www.kizuchiro.com/director_blog/diary.cgi?field=3

「巻き肩」のメカニズム考察

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「巻き肩」のメカニズム考察

以前のブログで取り上げた「前肩症候群」ですが
前肩というより肩甲骨が前に行って巻き込んでいる状態なので、改めて「巻き肩」として取り上げてみます。


2014年4月にイギリスカイロプラクターズ連合協会が以下のような調査報告をしています。
スマホやタブレットを眺めるために頭を下げて背中を丸めた姿勢でいると、心筋の動きが限られ十分な呼吸ができない。また、あばら骨も適切に動かせなくなるので肺と心臓が完全な状態で機能できなくなると指摘しています。脊柱後弯症を患う高齢者はそうでない人と比べて死亡率が高く、体脂肪率30パーセント以上の人の死亡率が高くなるのと同じ割合だといいます。
この姿勢で注目されるのが、「巻き肩」です。
パソコン使用時間が長くなるのと比例するように深刻化しています。筋肉量が少ない女性に特に多い症状です。

★なぜ巻き肩になるのでしょうか?

①座り仕事が多いこと
②パソコンやスマホなど、身体の前で作業する時間が長いこと
③体幹の筋力が弱いこと
④肩甲骨周辺の筋バランスの崩れ
⑤肩甲骨の正しい位置が認識されていないこと


★巻き肩による影響は?

①首や肩の可動域が狭くなる
②首や肩の痛みや凝りの原因になる
③ストレートネックになりやすい
④胸郭出口症候群の原因になる
⑤猫背になりやすい(胸椎の神経伝達機能の低下)
⑥呼吸が浅くなる

この中で特に気になるのが、⑥の呼吸についてです。
患者さんを見ていると、女性で呼吸が浅くなっている人が多い印象があります。

浅呼吸では酸素の供給量がへります。大幅にです。
人間の細胞は酸素がなくなると、死んでしまいます。

それほど重要な酸素の供給ですから、免疫疾患、循環障害など様々な障害や病気の原因にも成りうるのです。
最近、女性に多いと言われている「無呼吸症候群」も無関係ではないと思っています。
また、うつ病にも影響を及ぼしていると考えます。

 下図のように、正常な胸郭に対する肩甲骨の位置は背面から35度の角度ですが、前肩でのパソコン作業の場合は70度近くになっています。この状態では、肩関節は正常に動かすことはできません。
また胸郭が十分に膨らまない(肋骨が動かない)ので浅呼吸になってしまうのです。

【正常】


【パソコン操作時】

「巻き肩」のメカニズム考察

胸椎の後彎を過剰にさせることにより肩甲帯での連動がくずれることにより、胸椎自体の神経伝達機能の低下と僧帽筋上部線維、肩甲挙筋など肩甲骨を上げる筋が拘縮を起こし、逆に肩甲骨下制する筋群が弱化することが一因であると考える。
また、この姿勢を続けていると、浅呼吸になり呼吸筋である吸息筋と呼息筋の働きが悪くなり、正常機能していない可能性がある。

特に吸息筋が集まる胸の上部の筋肉に拘縮や癒着が起きていると考えられる。
また呼吸筋では一番大切と考えられる横隔膜の機能低下も大きな要因と考える。

吸息筋:僧帽筋、胸鎖乳突筋、斜角筋群、外肋間筋、横隔膜、脊柱起立筋
呼息筋:内肋間筋、外腹斜筋、腹横筋、内腹斜筋、腹直筋

 この呼吸と「巻き肩」との関係ですが、チェックする方法として、両手を交差するように胸に当てて、呼吸を深くしてみてください。
胸の上の部分が、深く吸いこんだ時に大きく広がる感覚が両手に感じれば、正しく吸息筋が働いています。あまり動いていないようでしたら、早期に専門家にみてもらうようにしましょう。

*冒頭のイギリスカイロプラクティック協会の記事参照元
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2589695/Sending-text-kill-Phone-users-hunch-send-messages-affecting-breathing-causing-cardiovascular-problems-later-life.htm

カイロプラクティック機能神経学

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先日、カイロプラクティック神経学のセミナーを受講してきました。

このセミナーは頭の固い自分には、なかなか難しく理解に時間を要するのですが、今回は一年間受けてきた総まとめの2daysセミナーということで、ロスから講師の吉沢公二先生がマンツーマンのわかり易い講義・指導をしてくれました。

カイロプラクティック機能神経学ですが、簡単に言えば、脳の大脳非対称(ヘミスフェリシティ)を評価し正常に戻していく治療法です。

この機能神経学の分野では、アメリカのFrederick Robert Carrick, DC, PhD(Dr.キャリック)が難病治療の分野でとても有名で、世界各国から患者が訪れています。(下段のyoutubeをご覧ください)この分野は日本ではまだまだ知られていませんが、用途は広く、一般的な筋骨格系の機能障害から自律神経系、内分泌系、免疫系、小児の学習障害など多くの疾患に有効とされています。

自分自身も1年前から、臨床で何人かの患者さんに驚くべき治療効果があったのも事実です。

 今後、この機能神経学の治療を積極的に導入して行こうと考えていますので、治療中に、脳の非対称を評価するために、眼球や小脳の検査など今までとは違った検査をすることもありますがご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。
(上記写真は、カイロプラクティック神経科医の吉沢公二先生)

●Dr.キャリック治療動画●

以下機能神経学についての文献の英訳です。
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機能的な大脳非対称(ヘミスフェリシティ)の研究は、行動・生物医学の歴史上長く行われています。

同時に、今日の機能神経学で最も激しい論争を起こしている概念の1つでもあります。

人間の脳の非対称性は文献でも報告され確立されています。この非対称性と神経機能の明確な関連性が、議論の的になっています。

大脳半球の非対称性(偏倚)の概念は、2つの半球はそれぞれ人間の機能の違った側面を支配し、その活動の程度も左右で異なるという前提の上に成り立ちます。
それぞれの半球の活動レベルは、末梢神経からの刺激量・栄養と酸素の供給量に影響を受ける中枢の統合状態によります。求心性刺激は脳幹と視床を通りますが、これらも同じく非対称性があるため、その過程で変調されます。

これまでのヘミスフェリシティは、言語と視空間の情報処理についてのみ適用されていました。現在では、大脳非対称性調節を含むより複雑な理論に発展しました。例えば、感情の楽観性と悲観性のバランス・自律神経の非対称性調節・左右非対称の末梢感覚などに加えて、認知・注意・学習・感情にも影響を与えます。

大脳半球は、構造的に左右で違うという単純なものではありません。視床・扁桃体・海馬・尾状核・大脳基底核・黒質・赤核・小脳・脳幹網様体核・末梢神経系という両側性に存在する構造の機能的非対称の可能性も含みます。

ヘミスフェリシティは、脊柱を含む身体全体の機能異常を引き起こします。その主な症状を下記に記します。

サブラクセーション
脊柱の硬さ(伸筋群の機能亢進)
脊椎症
脊柱内在筋の弱化(不良姿勢)
頸椎・腰椎の前弯減少
胸椎の後弯増大
前後・左右での重心動揺
骨盤底筋の弱化

Beck WR. Functional Neurology for Practitioners of Manual Therapy. Elsevier/Churchill Livingstone;2008. 8-9p.
吉沢セミナー実行委員会
訳:坂西龍之介
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